地方移住で就農は危険?TPPと減反廃止による農業への影響

高知県の観光列車

2014年に打ち出された地方創生を発端とし、東京一極集中の是正のために推奨されてきている地方移住(田舎への転居)。

地方移住の中で「新規就農」として農業者も募集されており、特に地方では耕作放棄地が増えていることの対策として農業者のニーズが高いです。

しかし、現在の農業という分野は「農業改革」による大きな波が来ることが予測され、農業者にとって苦しい世界になるような気がします。

そして、きわめて危険だと感じるのが、地方移住促進者が「TPP、減反政策、農業改革」について、あまりにも語っていなさすぎる点。

少なくともネット上にこれらの情報が無いことから、農業分野に無知な筆者が調べてわかった範囲で今後の新規就農の危険性について語ってみます。

01.TPPによる影響

TPPにおける関税部分は影響最小限で交渉されたとのことで、大半の品目について大きな影響は無いと言われていますが、実際に開始してみないとわからないとも言われます。

(1)主要品目の高関税は維持したが一部妥協

米の高関税などは死守したとのことですが、いわゆるミニマムアクセス(高関税の代わりに一定量だけは強制輸入する)の量は増えたとのこと。

過去に事故米の食品利用が問題になったほどに強制輸入米の用途は困っている上に、輸入量が増えるとどうなるかわからないものです。

(2)外食と中食の発展による海外産重視の流れ

共働きの家庭が増えていることもあり、外食、中食(お弁当など外で購入して持ち帰る)が増えてきています。

特に外食分野では海外産品でもうまく加工と味付けして販売していけることと、表示義務が一番弱いことから、TPPで安くなる海外産が選ばれやすいと言えます。

過去に、93年の冷夏でタイ米が入ってきたときも飲食店が工夫したことにより、タイ米でも対処できる料理と料理店が増えたと言われます。TPPで海外産が入ってきても同じ流れになるような気がします。

(3)Global GAPによる輸出への影響

日本産は品質が良いと言われていますが、国際認証「Global GAP」の取得率が低いため海外に品質の良さが伝わりにくいことで輸出量が伸び悩む懸念があります。

ただでさえ国土が狭いことで大量生産ができず高い国産野菜で、放射能汚染の問題なども加わって品質の良さを示せない可能性が出てきます。

02.減反廃止による影響

米の栽培、生産量を意図的に制限する「減反政策」が2018年度産から廃止となりましたが、以下3点の理由から農業の新規参入はリスクが高くなると感じます。

(1)減反廃止の内容が公開されていない

これまで40年間行われてきた減反政策は2018年度から廃止。……と言いながら、実は廃止されたかどうかが不明確です。

減反政策の内容において「何が廃止されたのか」「何が変更になったのか」が一般人に開示されていないように見受けられ、検索しても見つかりません。さらには「廃止されていない」と記載するニュースソースを見かけるほどです。

減反政策の是非について筆者は「判断が難しい」というのが本音ですが、少なくとも政策やルールが不明なまま押し通されている分野に飛び込むこと自体、危険です。

(2)米の生産量制限自体は廃止の様子

減反については、もとから「米の生産量を抑制すれば補助金をあげます」という選択制だった気もしますが、少なくとも最新では生産量制限は「無し」となっているようです。

ただ、2018年度だけでいうと米の生産量がほとんど増えていないとのこと。2013年頃から予告があったとはいえ、制度変更初年度ですからとりあえずは様子見なのでしょうか。

また、新潟県の十日町では「学校給食に今まで出していた魚沼コシヒカリを出せなくなった」という現象が起きているとのこと。

筆者の素人予測だと
・供給が増えるのに需要は増えることで、値崩れで生産者側が苦しくなる
・生産者側の競争が激化し、生産量の多さと販売力のある既存農家が強くなる

つまり、新規参入の農業従事者が生計を立てにくい世界になると考えます。

(3)転作奨励金は維持する様子

減反政策における転作奨励金(米以外の栽培に切り替えた農家への補助金)は維持する様子。

転作の方法のひとつは、食用米を他の用途に転用すること。飼料用米(畜産への餌)として畜産業者へ販売すると転作奨励金をもらうことができるそうです。

つまり、畜産業者へ0円で売ってもお金が入ります。食用米での販売基準額の9割くらいの額が出るという情報もあります。

もうひとつの方法は、米以外の作物を栽培すること。登記を水田にしておくことで認定されるので、他の作物を作って最悪は廃棄しても転作奨励金をもらえるらしいです。

どこまで本当かはわかりませんが、大半を補助金に頼ることになると
・必要とされない農作物を作ることによるモチベーションの低下
・いざ制度が変わって補助金がカットされると生計が立てられなくなる

つまり、やる気があって地方移住して農業を行う人には参入しにくい世界だと考えます。

03.農業改革による影響

農業改革に携わってきた小泉進次郎氏が力をつけてきていることから、以下2点の流れは強くなってくることが予想されます。

(1)従来の農協の体制を変える流れ

農業者が作った農作物は「必ず農協を通して販売する」というのは、人口増加の時代は効率的な方法でしたが、人口減少の時代には変革が求められます。

(2)農業者にも経営感覚が求められる

採算が取れるかどうかの計算すらしない農家が多いと言われ、この原因は先述の転作奨励金だとも言われます。
これからは農業者にも採算の取れる農業経営が求められ、さらに農業も会社化の流れが強くなることで「末端で農作物を作るだけ」と言っていられなくなります。

04.対策

移住で農業をするためには、作った農産物を販売するという従来の手段は困難な気がします。

対策としては、
・作ったものを飲食店で処理するなど「農業だけで生計を立てない」手段を持つ
・機械投入などのコストをかけず大量生産をせず現実的に売れる量を栽培する
・米など保存がきくものなどTPPで海外産が入ってきやすい品目の栽培は避ける

あたりでしょうか。素人分析ですが、少なくとも「半農半X」という言葉も聞きますし、品目を考えた上で農業以外の手段も持っておくと良いとは思います。

また「田舎では野菜などをタダでくれる」という話をよく聞きますが、これは「地域で値崩れしているため地元で野菜は売れない」という意味のようにも感じます。

そして、農業の平均年齢は60代なので、年金をもらいながら農業を行うという不採算な業界だということは意識しておいたほうがいいと思います。

まとめ

以上のとおり、2018年末時点でホットなキーワードをもとに「地方移住における農業」について触れてみました。

正直、筆者のように農業に無知で、地方移住の情報収集でも真っ先に農業は除外していた身で記載するのは申し訳ない気もしています。

ただ、こうして2018年12月30日からTPPが施行するにも関わらず、地方創生関係者がTPPについて語りもしない(そのような情報を検索してもヒットしない)という状況はかなりマズいように感じたので、記載してみました。

今度、農業関係者に聞いてみようとも思っていますので、新たにわかったことがあればリライトします。