
地方創生の一環として各自治体が雇用する地域おこし協力隊ですが、うまくいかず苦労している隊員も多いです。
そんな地域おこし協力隊を見ていて、失礼ながら思ったことがひとつあります。
それは「地域おこし協力隊の行動ってマルチ商法にハマる人と似ている」ということ。
トンデモ発言ですが、根拠があります。それでは、実際にマルチ商法と比較して「地域おこし協力隊がいかにマルチ商法と似ているか」を徹底解説していきます。
この記事の目次
はじめに:地域おこし協力隊とは?
コトバンクの辞書には以下のとおり記載されています。
人口減少や高齢化が進む地方の人材確保や地域活性化を目的に、総務省が2009年度に始めた制度。
地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRなどの地域おこし支援や、観光資源掘り起こし、情報発信などの観光振興、農林業への従事、住民の生活支援などにあたる。
市町村が隊員を募集し、1~3年の任期で委嘱する。報酬以外に生活費や住宅も提供し、国はその人件費や活動費として隊員1人当たり年400万円を限度に支援する。隊員の7割が20~30代、4割が女性。
各自治体が雇用する「地域おこしの業務を行う臨時職員」と考えるといいでしょう。その職員のことも地域おこし協力隊(以下、隊員)と呼ばれます。
地域おこし協力隊のどこがマルチ商法?

まず、地域おこし協力隊の制度自体は総務省が管轄となる普通の雇用で、当然ながらマルチ商法ではありません。
では、筆者が今回述べようとしているのは「隊員の制度の実態、隊員の行動などを見ると、マルチ商法と似通っている点が多い」ということです。
筆者も最近、インターネット上で「マルチ商法の闇」について解説している動画をよく見ているのですが、そこで解説されている内容が「これって地域おこし協力隊も該当するんじゃね?」と思う部分が実に多いです。
マルチ商法と類似する8つの特徴
具体的に、筆者が提唱する「マルチ商法と類似している特徴」は以下の8点です。
- メリットに感化されて人生の一発逆転を狙って加入する
- 自己啓発系の情報に感化されて妄信してしまう
- 盲目的に自組織を褒めて他組織を敵とみなす
- 金銭面が楽になると信じ込んでいるが実際はさらに貧乏へ
- 勉強会やセミナーが多く高揚感を得るが能力は上がらない
- 土日も無いほど忙しいのに結果として成果が出ない
- 自組織の関係ばかり重視して外から嫌われる
- 儲かるのが上の人間だけである
もちろん、これに該当しない隊員もいて、そういう隊員は得てして成功しています。
しかし、大半の隊員はこのマルチの特徴に当てはまってしまっており、その隊員たちはまともな成果すら出せずに終わってしまうのが現実です。
マルチ商法と類似する特徴の解説
それでは、地域おこし協力隊がマルチ商法(MLM)と似ている特徴8つについて、各特徴を「マルチ商法」「地域おこし協力隊」の比較で解説していきます。
1.メリットに感化されて人生の一発逆転を狙って加入する
マルチ商法の勧誘で定番のうたい文句は以下の3つ。
・働かなくても簡単に収入が得られる
・仲間もできてパーティーなど交流が楽しい
・販売する商品は良いもの
これに騙されやすいのは「人生に失敗している」「会社勤務で疲れている」「副業を探している」という状態の人。簡単に人生を変えられる、簡単に儲かるという耳のいい話に飛びついて会員になってしまう傾向があります。
地域おこし協力隊の定番のうたい文句は以下の3つ。
・住宅付き月給16万円前後の収入を得ながら活動できる
・地域のために貢献できて地元の方や仲間と交流が楽しい
・自然豊かで食べ物も美味しく良い環境
この条件は魅力的ではあるのですが、言い換えれば年収300万円以下。雇用は最長3年で、その後の保証もない非正規の官製ワーキングプアに該当します。
仕事は決して楽ではなく、地域住民同士の対立があると仲介役でペコペコしなければいけない場面も。
そして、実際は東京でも自然が豊かな場所があり食べ物も美味しく、地方の生活に慣れると「地方に住むのではなくたまに旅行で来るので充分では?」と感じる人もいます。
隊員になる人は次の2タイプが多い、という情報を元隊員の方がブログに記載しています。
ぶっちゃけちゃいますが地域おこし協力隊になっているのは
・行き場のない人
・自由な人(世界一周後とか)
の2種類の人が非常に多いです。ビジネスノウハウがある人なんて、ほぼいません。
出典:フリーランス農家
筆者もこの意見には同意で、前者の「行き場のない人」が多いように感じます。
実際、ブラック企業に勤めていて激務で疲れてしまったことで地域おこし協力隊に転身した方と面識がありますが、地域おこし協力隊になっても悩んでいる様子でした。
2.自己啓発系の情報に感化されて妄信してしまう
マルチ商法にハマってしまう人がよくバイブルとして挙げるのが、ロバート・キヨサキ氏の著書「金持ち父さん 貧乏父さん」。
サラリーマン<個人事業主<ビジネスオーナー<投資家 という序列で、時間給や月給で働くサラリーマンよりもビジネス運営側や投資家になるほうが楽して儲かるという内容。
マルチ商法を推奨する記述もあるそうで、この本に感化された方がマルチ商法に手を出しやすいと言われます。(そう語っている人を見たことがあります)
地域おこし協力隊はどうかというと、一例として挙げると「消耗してるの?」みたいなのが内輪で流行っていませんか?
この発信源となるK県では、セミナーやサロンで内輪の賑わいを演出していることから「K県は地域おこしに成功している」と妄信する隊員が多いです。
しかし、実際は内輪で賑わっているだけで一般人からの認知度は低く、K県が成功しているという数値や実績も見受けられず人口減少も特に激しい県です。
そういった表面的な宣伝に感化されて地方移住して失敗した体験談がネットに挙がっていますし、現実として隊員も40%くらいは定住できずリターンしています。
会ったこともない人の偏った意見になびいて隊員になっても、失敗するのは目に見えています。
3.盲目的に自組織を褒めて他組織を敵とみなす
マルチ商法では、とにかく自分の組織がいかに素晴らしいものかを説きます。そして、末端会員によくあるのが他のマルチ企業を徹底的に悪く言う点。
地域おこし協力隊は所属する自治体をPRする役割なので、自組織を褒めるのが仕事のひとつであり表面的には問題ありません。
しかし、自治体の利点を把握できているかというと、無知すぎる隊員も結構いて根拠なく自治体をPRしてくることもあります。
また、東京と比較していかに地方が素晴らしいかという比較解説をする方も多いです。その解説も的外れな部分が結構あり、突っ込むと「よく知ってますね」と返ってきます。
移住希望者を無知とみなしてメリットを語るものの、実態は隊員も移住者なので無知。この点に葛藤する隊員は多いんじゃないかな、と思います。
4.金銭面が楽になると信じ込んでいるが実際はさらに貧乏へ
マルチ商法では「楽して儲かる」と言って会員を引き込みますが、実態として儲かるのは上位会員とセンスのある人だけで大半の会員は儲かりません。
しかも自爆で商品買い込みをして借金までする会員がいるというのは、よく聞く話です。100万円単位で借金したと語っている元会員の動画がネット上にいくつか挙がっています。
地域おこし協力隊はどうかというと、隊員が「地方は生活費が安い」と言うのですが、これはかなり誇張されていると考えたほうがいいです。
まず、前提として実質の手取りは10万円前後。町会費やら何やら取られる地域もあります。
雇用関係のない協力隊の手取りは月10万円だと思いましょう。結婚してる協力隊やっていけてるんだろうか??と疑問になります。
出典:フリーランス農家
その分母に対して、ガソリン代で東京都民より交通費がかかり、イベントが東京で開催されると交通費数万円が飛ぶし、飲み会すれば代行を呼ばないと帰れない、なんて地域も多いです。
よく「野菜とかもらえるしお金を使う場面がない」と言う隊員もいますが、そんなときに「ガスはプロパンだから光熱費高いでしょ?」「野菜は全品目もらえるの?」と突っ込むと「実は……」と実情を話してくれます。
そして、地方で3年間限定で活動した後、多くの隊員が「保証もない自営業」として放り出されます。起業の9割は5年で倒産する世界で、補助金漬けの元隊員が商売を継続するのは困難です。
5.勉強会やセミナーが多く高揚感を得るが能力は上がらない
マルチ商法では商品セミナーや販売ノウハウセミナー、そしてバーベキューなど勧誘系の集まりまであって忙しくなり、それでいて成功できない会員が多いと聞きます。
地域おこし協力隊はというと、総務省主催のイベントを筆頭にセミナーや勉強会など自己啓発の会が度々あります。受講報告を所属自治体に提出する必要があるものも。
そして、その手のセミナーの後に隊員同士で飲み会をすると大抵「自治体の悪口、愚痴」で盛り上がります。結局、総務省や自治体に責任転嫁するのは「隊員あるある」です。
他自治体の成功事例を聞いて「俺にもできる」と思い込んで、しかし実際は自分にできず自治体に却下されるケースも。
果てや成功事例を持ち出して「あの自治体は理解があるのに、それに比べてうちの自治体は」と言い訳に利用することまであります。
セミナーにて隊員同士で「成功事例だと思っている事例」を共有しても、失敗者同士の情報交換であれば建設的なわけもなくさらなる失敗を産むサイクルに入ります。
それだけに限らず、最近では「隊員同士の情報交換が必要」といってオンラインサロンや集まりを開催する方も出てきています。コンテンツ自体が「隊員の経験談の共有」レベルであれば隊員の成長は見込めません。
6.土日も無いほど忙しいのに結果として成果が出ない
マルチ商法では先述のセミナーに加えて、勧誘した子、孫に対しての事後フォローなどで忙しくなり、不労所得とはほど遠いと聞きます。
地域おこし協力隊はというと「土日も無いほど忙しい」という声を結構聞きます。副業の可否は自治体や雇用形態により異なりますが、副業を本格的にする時間も取れないほど。
それでいて3年経って隊員を卒業した後に、自営業などで放り出されると収入が一気に減ります。ブラック企業よりも厳しい現実を迎える人もいるでしょう。
7.自組織の関係ばかり重視して外から嫌われる
マルチ商法では「自組織で仲間が増えてワイワイできる」のがひとつの売りと言われ、バーベキューやホームパーティーで楽しく会員を増やせるのを売りにするマルチ企業も。
しかし、現実は友人知人を勧誘して「友達がいなくなる」というのも定番の話。
地域おこし協力隊では事情はかなり異なりますが、隊員の給料は国民の税金が元になっていることから成果を出せない会員に対して「税金泥棒」という目が向けられることも。
また、筆者も個人的に「隊員は隊員同士ばかりで交流している」傾向が強いと感じます。一般人に対して「売り、売り」の感覚が常態化してしまっている隊員をいくつか見かけます。
twitterでも「隊員の名簿作ります」「隊員が集まる場を作ります」「隊員の話題」といったときは率先して反応するのに、地方創生やTPPなどの話題には驚くほど無関心です。
彼らの関心事は「内輪でワイワイ」「自分の自治体だけ」という傾向が非常に強く、外に対する興味関心が異常に低い。
特に飲食店や宿経営を目指すのに3年経って顧客リストも取らずに、自営を始めてからマーケティングの問題に直面するときには時すでに遅しです。
8.儲かるのが上の人間だけである
マルチ商法の運営母体に近い上位会員は儲かりますが、下位会員がどれくらい儲かるかはマルチ商法の解説がインターネット上で出ていますので見ればわかるとおりです。
下位会員を増やすことで上位会員が儲かるので「理論上は全員が儲かる仕組み」と説明されますが、無限連鎖が続くわけがありません。
地域おこし協力隊の制度では、自治体は隊員を1人雇うことで年400万円の予算が付きます。隊員に給料を払ってもプラスになるため、自治体は痛手が無く儲かるシステムです。
ノーリスクで人材確保できるため各自治体の間で「隊員の募集合戦」になっているというのが、最近の制度の実態です。隊員2~3名くらいの良識的な自治体もありますが、まるで「ふるさと納税」のように節操なく儲け重視で数十人の隊員を雇う自治体もあります。
マルチ商法と異なり、地域おこし協力隊の制度では自治体が隊員を雇用する「親と子までであり孫は無い」ですが、子を大量採用する自治体はちょっと異様です。
例えば竹田市では2018年時点の現役隊員は40名。人口2万人の衰退市町村に国民の税金が年間1億6000万円も突っ込まれていて、さて成果はあるのでしょうか?
観光のための活動をする隊員もいる竹田市。さて、何県にあるでしょうか?
こう聞くと「天空の城の竹田城で有名だよね!兵庫県でしょ」って言う人、多いですよね。正解は大分県です。観光の活動をしているなら知名度が上がっているはずなんですが……。岡城址も整備不良で本丸が荒れていますし、平成で1万人も人口減少しています。
孫まで勧誘するねずみ講の構図ではないですが、自治体の儲けのために子の勧誘がなされているのが実情です。
もちろん「せっかく雇うんだから活躍して欲しい」という形で隊員と接する自治体も多く、儲け重視の悪質な自治体も最近は減ってきていると言われていますが、自治体有利の制度というのは間違いないです。
なぜ地域おこし協力隊は失敗するのか?
以上で解説した特徴8点について、隊員の多くに当てはまっていると感じます。むしろ、当てはまっていない隊員は成功する可能性が高いと思います。
行き場がなく隊員になって失敗する方の原因のひとつは「自己不全感が強い」ことです。
「何かを自分で成し遂げた経験」「地道な努力」「自分というブランド」を持っている人が成功する、というのは隊員にも当てはまります。実際、それらを持った方が隊員になって首相官邸で表彰されたのも記憶に新しいところです。
補足
ちなみに、筆者も隊員の方と数名知り合いです。彼らはみんな頑張っていますし、苦労や悩みなどを抱えながら必死に取り組んでいます。雇用する自治体の方もしっかりアシストしており、筆者も交流のある自治体の方は優しくて面倒見がいい方たちです。
それゆえ、隊員もある意味でマルチ商法と同じく「被害者」なわけで、隊員が以上の点を意識すれば変われるのではないか、というのが筆者の考えです。
以上、地域おこし協力隊がマルチ商法と類似している9つの特徴でした。