総務省によって2009年に制度化された、地域おこし協力隊(以下、協力隊)。
都会から過疎地域へ移住して地域おこし活動を行う役割で、地域の自治体に所属して任務を果たして給料が出る制度です。
俗に評判が悪いこの制度ですが、私が見るかぎり制度の問題や地域住民の問題ではなく協力隊の人間性の問題だと感じます。
そこで、今回は「失敗する協力隊たちに共通する特徴や行動」を挙げてみました。(成功している一部の協力隊は達成できているであろう内容です)
目次
A.情報発信における問題
01.SNSでの情報発信が少ない
率直に言って発信量が少なすぎる自治体や協力隊アカウントが多く、1ヵ月以上なにも発信していないなどもザラ。
趣味なら個人の自由でいいですが、仕事や将来の起業を念頭に置いたSNSアカウントで数週間も放置するのは論外です。
加えて言えば、SNSでの情報発信はストック(辞書型)ではなくフロー(ニュース型)なので、毎日更新して「閲覧者が1日1回見にくる」ように習慣づけさせるくらいの頻度であることが基本です。
それが不可能なのであれば「あらかじめ曜日を決めた上で」週1発信にするなど、定期的に更新されることを読者に理解してもらいましょう。
SNSを活動の一部だと自身が認識し、周囲にも認識させれば良いです。
協力隊の活動報告や研修報告を自治体内部で提出する決まりになっていると思いますが、SNSを活動報告書のメインにして内部報告書を簡略化するよう提案すればいいです。
地域住民が閲覧できない内部報告に時間をかけすぎるのは無駄です。民間と異なり財源は税金なのだから、活動内容は地域住民に極力開示するのが筋でしょう。
02.エゴサーチをしていない
エゴサーチとは「自身の名前でネット検索して自身の評判や評価を見る」ことで、今回の場合だと「SNSなどで自分の自治体に関する第三者の書き込みを検索する」ことが該当します。
現状、SNSを運用する協力隊においてエゴサーチをしている自治体は少ないというのが正直なところでしょう。(東北エリアはそこそこ実施できている印象です)
観光客など外部の人間が発信する情報や感想をシェアやリツイートすることで「うちの自治体に関心を持っている人が多い」ことを示せるのに、検索もせず見過ごすのはもったいないです。
情報発信は当事者が行えば「売り込み」ですが、部外者が行えば「クチコミ」になります。当事者のポジショントークよりも、一般人の感想のほうが信頼性が高いのは言うまでもありません。
SNS公式の検索機能を活用すればいいです。自身の自治体名で1日1回検索をして、引っ掛かったポジティブなクチコミにお礼を一言添えてシェアするだけです。
これを日々繰り返すことで「売り込みではない第三者のクチコミ」が集まり、SNSに賑わいができて「この自治体は興味を持たれている」空気が醸成されます。そして、さらに人が集まる好循環に入ることができるのです。
03.地域おこし手法の話ばかりする
これは協力隊のプライベートアカウントや対面で多いもの。「協力隊が地域おこしの話をするのは当たり前では?」と思うかもしれませんが、例えば以下のような人間を見てどう思いますか?
・工具や工法について延々と話す大工や建築家
・ブロガー論や集客法ばかり発信するブロガー
・地域おこしの手法ばかり語る地域おこし担当
このような内輪向けの情報発信に興味を示して集まってくるのは同業者(売り手)であり、本来目を向けるべき見込み客(買い手)はむしろ去っていってしまいます。
同業者ばかり集めて成り立つのは「コンサル」を目指す人くらいです。協力隊卒業後に古民家や飲食店などを開業する予定であれば、同業者を集めても客や味方になってくれない人が大半です。
農業担当なら農業、古民家再生なら古民家、観光担当なら観光の話といった形で「扱うテーマの話」を主体に情報発信したほうが良いです。
将来的に起業するテーマに沿った見込み客(買い手)をあらかじめ集めておけば、起業時にファンが沢山いる状態でスタートできるのです。
地域おこし手法や協力隊の裏話は、あくまでも補助的に挟み込む程度のほうが効果的です。
04.情報発信だけして受信しない
これも協力隊に多い考え方で、特にプライベートアカウントでよく見かけます。「地方が発信側で都会が受信側」だと勝手に決めつけて、一方的に情報を発信しているだけの「押し売り」をする協力隊の多いこと。
せっかく地域に興味を持ってくれる人に対して、ひたすら情報提示ばかり。それで「みんな付いてきてくれる」と期待したところで、実際は発信しても「いいね0~1個」など閑古鳥。
自治体のブランド名を冠して実顔までさらしているのに、そこら辺にいるサラリーマン・主婦・学生よりも反応が得られないのは恥です。
一方的な情報発信というのは大手企業や大手メディアなど「マス」のやり方。個人でそんな方法が成り立つのは「書籍を出しているレベルの人」「周囲を惹き付ける特技のある人」です。
得意分野をはっきりと明示した上で、その分野での発信内容に何かしらの反応をしてくれた相手に興味を持ちましょう。
自分勝手に振舞って許されるのは趣味のレベルであって、協力隊はプライベートもチャンスだと捉えて複業(副業)にするくらいの感覚がないと先がきつくなります。
05.在任中に名前を売ることをしていない
協力隊は現役の活動期間内に新聞やテレビなどで取材が来ることもしばしばあります。しかし、この取材を「自治体向け取材」だと捉えており、チャンスを棒にふっている協力隊が多いように感じます。
最初は自治体の活動PRだとしても、そこで自身の名前を売ることができます。そして、プライベートや副業で取り組んでいることがあれば「協力隊が変わった面白いことをしている」として取材が来ることもあります。
優秀な協力隊は取材で名前と活動内容を売り込んでおり、それが卒業後の仕事や収益につながるところまで見込んでいます。協力隊は現役時代こそ名前を売るボーナスタイムだと理解しましょう。
在任中から店名や活動名義まで具体的に決めておき、特技などがあれば宣言しておくことです。そして、試作でもいいのでテストマーケティングを始めていきましょう。
副業禁止の雇用形態だとしても、儲けを出さない前提で許可を出してくれるケースはあります。
実例として私の知り合いの協力隊は、在任中から自治体公認で担々麺のお店を週1で出しています。店名も公開されていて地元新聞でも取り上げられており、自治体のお祭りイベント時も屋台出店していて知名度も高いです。(実際、食べてみて美味しかった)
B.地域内の交流における問題
06.身内に認められたいと考えすぎている
協力隊は「地域や地域住人の良さを認める」「外部に対して地域の良さを認めさせる」立場です。要は「認める」「認めさせる」立場であり、地域にとってプラスになる対価として協力隊に給料が支払われるわけです。
しかし、多くの協力隊は「身内に認めてもらう」ことが主軸になってしまっています。そして、それが叶わないと知ると「地域の愚痴大会」に移行するのです。
先ほど挙げた「協力隊が地域おこしの話ばかりする」のは、身内に認められたいから。そんな自分中心の人間が「地域の良さを認める、認めさせる」ことなんてできるわけがないのです。
自発的に「相手を認める」行動を取ればいいだけです。自身のことだけでなく地域住民の努力や活動も発信する、SNSでのフォロワーの発信内容にアクションする、地元飲食店のクチコミをポジティブに書くなど出来ることは沢山あります。
世の中、認める側の人間がいて初めて認められる側の人間が生まれます。他人を認めることを繰り返していくことで、巡りめぐって他人から認めてもらえるようになるのです。
C.地域外の交流における問題
07.地域外の人と交流しようとしない
協力隊の多くは「地域おこしに携わる人」「自分の地域の人間」とは交流しようとしますが、そこから外れた人には興味関心を示しません。
SNSでも「内輪はフォローするけど部外者はフォローバックすらしない」という文化が平気で横行しており、本当に閉鎖的なコミュニティを形成しています。古くからの地域住民よりも、移住者のほうが閉鎖的な傾向が強いと常々感じます。
趣味であれば好きな相手とだけ関わればいいですが、協力隊は業務です。内輪だけに興味を示していて移住者が増えるわけがなく、そんな見識の狭い人間は地元の人間からも受け入れられるとは言い難いでしょう。
相手の性格や行動を見て関わるかどうかを選別するのはアリですが、相手の住んでいる地域や趣味などのジャンルで相手を選別すると自身の見識は狭くなります。
他地域や他ジャンルの人間にも関わっていくことで、他地域や他ジャンルに自分の活動が伝播していきます。意外なところに転がっているチャンスにも目を向けましょう。
08.地域外の人が興味を示すと不審がる
普段から「地域外の人に興味を持ってもらいたい」と活動しながら、実際に興味を持たれると「なぜ?理由は?なんでこんな地域や私に興味を持ったの?」と警戒する協力隊を見かけます。
なぜこんな矛盾が発生するかというと「地域や自身に価値がないと思いながら活動しているから」です。魅力のない(と思っている)商品を売り込むとき、こういった矛盾が発生するのです。
自身のいる地域に対して自信を持ちましょう。そのためには地域についての勉強も必要で、知識や理解が不足しているから自信がないのです。
もちろん詐欺師と思わしき怪しい人間が来たら警戒が必要ですが、そうでなければ興味を示してくれた人に対しては寛容に応対すべきです。
D.協力隊同士の交流における問題
09.内輪で傷の舐め合いをしている
協力隊は同じ属性の人間としか仲良くしない印象が強いです。単に気の合う人同士で仲良くする目的であれば良いことですが、実際のところ協力隊同士がつるむ理由は「他の協力隊と比べて遅れたくない」です。
それゆえ、他の協力隊がうまくいっていないと安心し、他の協力隊と話が合うとまた安心するわけです。
これはつまり「協調性ではなく同調性」であり、スキルの向上など見込めません。単なる精神安定剤として他の協力隊とつるむのは、正直やめたほうがいいです。
協力隊同士で仲良くするときは、ポジティブさを意識すること。先ほども書いたとおり、農業、民泊、副業、DIY、就職情報など「取り組むテーマに沿った会話」をしましょう。
くれぐれも自治体の愚痴自慢や、結論の出ない地域おこし手法などを積極的に語らないこと。できないことに同意する仲間ではなく、できることに同意してくれる仲間を作りましょう。
10.協力隊同士の関係性が希薄
協力隊同士は活動報告だと仲良くしている写真を上げるわりに、リアルでもSNS上でも仲良くしている様子をあまりにも見かけません。
先ほど「内輪だけで盛り上がる」と書いた部分も、協力隊サミットやワークショップなどのスタートアップのときだけ。継続的に人間関係を築けていないし、築く努力をしていないです。
協力隊のSNSアカウントの閑古鳥っぷりも、ここが原因だったりするわけです。(だからこそ9割方は都会で失敗して、協力隊になっても実績が出ずにくすぶっている)
結局のところ「会社の同僚や社員はしょせん会社内だけの付き合い」というサラリーマン感覚が残っているのだと思いますが「協力隊は会社ではない」と自覚しましょう。
他の協力隊を「情報収集のためだけに仲良くする」という目で見ないこと。友達を作る感覚で自発的に仲良くすればいいだけで、協力隊サミットなど活用できる場は総務省からちゃんと提供されているはずです。
前述のとおり「相手を認める」行動をまず自ら取っていくことで、仲間が増えてチャンスも増えていくのです。
E.協力隊OBとの交流における問題
11.協力隊OBへのアシストをしない
たとえば協力隊OB(卒業した元協力隊)が運営するカフェやレストランの食べログを見ると、クチコミが0件というものを平気で見かけます。
これは協力隊同士のコミュニティが「情報収集の場」でしかなく、仲間をフォローしてアシストしていくという感覚が薄いということ。それだけ疎なコミュニティなのです。
現役協力隊員が協力隊OBの店へ協力するのは「義務ではない」ですが、そう考えることがアウト。現役がOBを応援しないということは、つまり卒業してOBになったら現役が応援してくれないということです。
卒業後にたとえば起業して店を構えても、協力隊コミュニティはまるで役に立たず驚くほど孤立します。
協力隊OBの店に行ってみるといいでしょう。採算を取って生活するための知識も得られますし、いざというときに協力してもらえるようにもなります。
F.結果への執着心の無さの問題
12.成果は出せなくて当然と言い出す
協力隊やOBが最近とくに言い出すのが「卒業後に住み続けるだけで成功だ」「協力隊制度に問題があるから成功できない」というもの。
正直、単なる「お引っ越し」に税金を1人当たり数百万円も使うことのどこが成功なのか、少しは考えたほうがいいです。
また、法律から民間企業の規則まで「世の中の制度には得てして欠陥がある」もので、そのような条件下でも成功する人は沢山います。成功できないのは協力隊制度の問題ではなく、協力隊のスキルや人間性の問題です。
結果の出ないことを常識化するのはやめましょう。成功している人や、しっかり生活を成り立たせている人と仲良くなることです。また、成功しているフリをしている自称インフルエンサーと関わるのはやめたほうがいいです。
優秀な人は大小問わず誰の目から見てもわかる成果を出しているのですから、無能な9割に属するのではなく優秀な1割に属することを意識することが大事です。
まとめ
以上、12項目ほど紹介しましたが、要は「自分さえ良ければ他人はどうでもいい」という立ち振る舞いをして、その結果として周囲から「おまえのことなどどうでもいい」という応対をされているというのが大半の協力隊の実態です。
今回記載した内容に「私は該当しないし、ちゃんと成果を出している」のであれば、優秀な協力隊でしょう。実際に成功している協力隊は以上の内容をちゃんとクリアしているもので、結局は制度や地域の問題ではなく協力隊当人のスキルと人間性の問題なのです。
以上、地域おこし協力隊の失敗者に共通する行動についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。