長崎県の福江島で電気自動車レンタカーを利用してみた

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時折話題になりつつも、主流どころか選択肢にも入らない電気自動車。

レンタカーでもラインナップされない乗り物として、一度も乗った経験の無いという人が大半ではないでしょうか。

そんな中、2010年に電気自動車を取り入れてレンタカーの主力車種にしている離島があります。長崎県の五島列島の中でも観光名所となっている「福江島」です。

福江島における三菱「i-Miev」の電気自動車レンタカー。利用してみたところ結構面白かったので、紹介してみます。

通常のガソリン車とは使い勝手の少し異なる電気自動車ですが、加速フィールの良さや使いやすさなど魅力たっぷり。充電環境や走行距離など本来は制約のある乗り物ですが、実は離島という限定されたステージでは大活躍する意外性のある車。福江島の好取り組みを詳しく紹介していきます。

1.福江島ってどんなところ?

長崎港からフェリーで西へとひたすら進んで約3時間。長崎港から約100kmほど離れている場所にある、キリシタン文化由来の教会が多く残る五島列島。

中通島、若松島、奈留島、久賀島、福江島の五つの大きな島を中心に約140の島が群がっており、その中で一番発展している島が今回紹介する福江島です。

鳥が群がる綺麗な福江港、夜もそこそこ賑わうアーケード街、海鮮料理が旨い居酒屋、モスバーガーもある利便性、島の周囲にある自然の名所、そして静かにたたずむ教会。

落ち着きのある島を電気自動車で巡る、のんびり旅行です。(写真は島の西端にある井持浦教会)

2.お店の公式Webサイトと事前の予約

今回利用したのは、福江島の主要フェリーターミナルである福江港にあるレンタカー屋さん「レンタカー椿」。

軽の電気自動車「i-Miev」を20台保有しており、ガソリン車もある軽自動車専門レンタカー屋さんです。

写真は2013年時点の料金表。どうやら増税後の今も値段据え置きのようで比較的安価に利用できます。

先述のサイトに予約フォームがありますし、予約なしで当日現地に訪れても空きがあればすんなり借りることができて便利です。

3.三菱の電気自動車「i-Miev」とは?

三菱のガソリン車「i(アイ)」の先進的なボディとプラットフォームをベースにした電気自動車「i-Miev(アイミーヴ)」。

もともとリアミッドシップのエンジン部分に永久磁石式交流同期電動機とリチウムイオンバッテリーを搭載し、減速時のエネルギーを電力に変換して蓄電する回生ブレーキを搭載。

ホイールベース(前タイヤと後タイヤの間隔)が2,550mmと軽自動車にしては長いのですが、フロントにエンジンが無いことでステアリングの切れ角を大きく取れて小回りがききやすいのが魅力の車種だとか。

軽自動車ですが4人乗り5ドアなので、数人グループの旅行でも不便なく利用できます。

4.いざ乗車!エンジン始動と特徴的なインパネ

まずエンジン始動ですが、キーを刺すところはガソリン車と同じですが、キーは回しません。

始動ボタンを長押しすると「ピピン」と音がして始動しますが、もちろんセルモーターの回転音もなく無音のままです。

中央のタコメーターはエンジンの回転計に相当するもの。アクセルを強く踏めば右に振れて、下り坂などでアクセルを踏まずに走行すると左に振れてCharge(充電)されます。

ちなみにデジタルの数字は走行速度です。

ガソリンと同じく左上に燃料メーターがありますが、加えて右上に残走行可能距離がキロ表示されるため「あとどれくらい走行できるのか」が一目瞭然。これは便利です。

AT車でシフトレバーは普通の見た目。2ndに相当する部分にあるのは、回転数を上げすぎない「ECO」モード。常時ECOにしていても違和感なく走行できます。

カーナビもありますし、特段不便なところはありません。

5.いざ走行!島内ドライブのフィーリングは?

島内一周は直線が多少ありつつ左右交互のカーブもそこそこあり、心地よいワインディング。加速が良いことに加えてハンドリングが軽快な車種ゆえに、違和感どころかガソリン車よりも楽しくて自然なフィーリング。

空港や鬼岳展望台へ向かう勾配のある登り坂(写真)も難なく駆け上がっていきます。加速の良さが電気自動車の魅力だというのを実感します。

公式サイトによると、発進直後から最大トルクを発揮するのだとか。カタログ値で16.3kgf・mのトルク、これって私が昔乗っていたマツダロードスターNB8C前期型とほぼ変わらない値。1800ccのガソリンエンジンと遜色ないってスゴイ。

一方、馬力はMモデルで41PS、Xモデルで64PSと貧弱。60km/hくらいは難なく出せますが、あくまで加速が良くて高速走行は苦手な車種。そう、高速道路が無くて直線道路もそこまで多くない離島という環境にピッタリの車なのです。

6.最大の特徴、燃料補給はガソリンではなく電気

充電スタンドの位置や案内の表記看板は基本的に水色。

i-Mievの最大の欠点は、フル充電による走行距離が約100km程度であること。島内の国道1周は約140kmと比較的コンパクトですが、最低1回は充電が必要となってしまいます。

しかも利用者の充電は「急速充電」という充電方式となり満タンが80%扱いとなるため、Maxで約80km分までしか充電できません。燃料切れにならないよう考慮して走行すると50km毎に充電するハメに。

さらに、急速充電でも満タンにするために約30分程度かかってしまいます。

以上により難のある電気自動車ですが、実は対策方法があります。

まず、充電しながら充電スタンドを離れて観光できること。井持浦教会や遣唐使館で充電を始めてから観光すれば、観光を終える頃には充電完了状態。

そして、レンタカー向けの無料充電スタンドが6箇所ほどあります。レンタカー受付時に受け取る認証カードを利用して無料充電スタンドを利用すれば、充電し放題。ガソリン代に相当する部分が0円で済むので、一般のレンタカーよりリーズナブル。ガソリンの高い離島でこれはかなり嬉しいです。

有料で構わないのであれば、島内に有料充電スタンドが30箇所ほどあるので緊急時の充電も行いやすいです。

電気充電スタンドは24時間利用可能。夜でも開放されていますが、無人で静寂の中で虫がたまに寄ってくる中での充電はちょっとコワイ。

ガソリンスタンドだとセルフ式でも消防法の規定により裏で人員待機が必須なので人件費がかかるのですが、電気充電スタンドの場合は従業員がいない無人スタンド形式が許容されています。こういう点も離島の生活環境に合っています。

ただ、壊れていて修理中のスタンドが意外に多いのが実情。実際、富江で1台が修理中、もう1台も壊れていて差し込んでも反応しない状態。こうなると「業者が来るまで使えません」となり、スタンド設置の施設に聞いてもダメ。燃料切れのときに手詰まりになりそうな危険性をはらんでいます。

7.島の事業のポイント、そして

今回は福江島でi-Mievを借りましたが、確か他のレンタカー屋さんに日産のリーフもあったと思います。

また、同じく五島列島の中通島(上五島町)にも電気自動車が手厚く用意されています。

教会で充電駐車していたときに他の観光ガイドさんが「ほら、充電している電気自動車がありますよ」と紹介していました。福江島のセールスポイントなのでしょう。

本土では電気充電スタンドの設置数の問題で電気自動車が主流になることは無いと思いますが、離島という特殊環境がこれほどまで電気自動車向きだとは思いませんでした。

ただ、社会実験や先端技術のために国や自治体からの補助があってこその価格帯。これから長期的に運用していけるのか不安な気がします。

以上のとおり、魅力ある電気自動車レンタカー。五島列島観光の際にはちょっと変わった体験として利用してみるのをオススメします。

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セシモ コイ(瀬下 恋衣)
趣味の国内旅行ライター

国内旅行が大好き。NIKON一眼レフで主に花や絶景を撮影し、写真を活かして当旅行サイトを運営。
旅行系Vチューバーとしても活動予定で、国内情報を解説するため勉強中。